子どもの風邪は発熱と鼻水からはじまり、最後は咳の症状が出ることが多いです。特に咳や鼻水が続くと、寝不足になったり食欲がなくなったりすることがあります。症状が長引く、悪化してきたなど心配なことがあればかかりつけ医に相談しましょう。
小さな子どもは、症状をうまく説明できません。「食べる・寝る・遊ぶ」ができているか観察し、問題があるようであれば、受診を考えましょう。
かぜ症候群とは
風邪=「かぜ症候群」といって、自然治癒の見込める軽症のウイルス感染症です。鼻や喉などに急性の炎症がおこり、咳や鼻水・のどの痛み・発熱などの症状がみられます。予後は良好で、多くは安静や栄養補給を心がけることで自然に治ります。
風邪のシナリオ
細菌が原因の感染症は抗生剤が有効ですが、ウイルス感染症には特効薬はなく、自分の体力により症状が改善されます。
ひき始めより症状が変化しているように感じて、「昨日より悪くなってるかも!?」と不安に思うこともあるかもしれませんが、風邪の症状は徐々に変化するシナリオを経て治っていきます。
発熱
発熱の多くは1〜3日でおさまりますが、中には5日続いたり、一旦下がって再び上がることもあります。
鼻汁(鼻水)
発熱の後は、透明な鼻汁が出ます。その後壊れたウイルスや細胞を食べて処理する白血球成分が増え、色の付いた鼻汁になります。
咳
咳は最後に出てくるというのが風邪でもっともありがちなパターンです。症状が治まるまでどんな風に過ごすべきか医療者の立場から提案します。
「朝熱が下がっているから」「食欲はないけど熱は出ていないから」などで油断せず、24時間解熱していること、「食う・寝る・遊ぶ」がそろっていることがお子さまの体調のバロメーターです!
検査が可能なウイルス
迅速検査キットがある気道感染症は限られています。以下のウイルスや菌以外は、すぐには診断することはできません。
- インフルエンザウイルス
- アデノウイルス
- RSウイルス
- 新型コロナウイルス
- 溶連菌
- マイコプラズマ
- ヒトメタニューモウイルス
治療、対症療法について
ゆっくり体を休めてウイルスをやっつけるための体力を蓄えましょう。発熱時は解熱剤を使用し、咳や鼻水などの症状を緩和する薬を飲んで、症状をやわらげ安静にできるようにしましょう。安静9割、薬1割ぐらいの感覚で安静を保つことが重要です。
水分・栄養補給
脱水にならないように、また体力が落ちないように飲食しましょう。少しずつで構いませんが、エネルギー源になるもの(炭水化物)や消化の良いものを選んで食べましょう。
適度な温度・湿度
体の冷えは抵抗力を低下させます。寒さを訴える場合(悪寒があるとき)は身体をあたため、熱が上がりきって汗が出るなど暑がるときは冷やしましょう(解熱剤は熱が上がりきってから使用すると効果的)。空気が乾燥していると咳や鼻水などの症状がひどくなるので、加湿器の利用や濡れタオルを干すなどして湿度も調整しましょう。
このような場合は受診しましょう
- 生後3ヶ月で咳・鼻水が出ていて、哺乳量が少ない
- 顔色が悪い、唇が紫色をしている
- 時計の秒針より速く呼吸をしていて苦しそう
- 肩で呼吸している、全身の力で息をしている
- 呼吸のたびにあばら骨が浮き出る、ベコベコと胸がへこむ
- 声がかすれてケンケンと変な咳をする
- 呼吸のたびに「ゼーゼー」「ヒューヒュー」と音がする
- 鼻づまりや咳で眠れない、機嫌が悪い日が続く
- 食欲がない日が続いている
- 耳を気にしてよく触る、痛がる
そのほか「不機嫌が続く」「周囲で病気が流行していて不安」など、心配なことがあればかかりつけ医に相談しましょう。
おうちでできるケア
咳や鼻水は菌やウイルスなどの異物を体の外に出すための正常な反応で、無理に止めるものではありません。
また、咳止めなどの薬を飲んでもピタッと症状がなくなるほどの効果はないのです。抗ヒスタミンの含まれている薬はけいれんを誘発することがあるので、市販の風邪薬には注意してください。家庭では少しでも楽に過ごせるように症状に合わせたホームケアが必要です。咳や鼻水・鼻詰まりの症状で過ごしにくい時は実践してみてくださいね。
- 水分や食事は少しずつこまめにとる
- 鼻水をかむ、吸い取る
- 飴やはちみつをなめる(1歳未満は禁止)
- 室温・湿度は適度に保つ
- 湯冷めに注意
- 寝るときは頭部をやや高くする
- 大人が禁煙する
- 背中をさする、トントンする
風邪を予防するためには?
- 風邪のウイルスは感染者の咳、くしゃみ(飛沫)によって感染します。流行時は人混みを避け、こまめな手洗いを心がけましょう。
- 暖房や加湿器を使って温度・湿度を保ちましょう(目安は20~23度、40~60%)
- 好き嫌いせずバランスの良い食事をとりましょう
- 規則正しい生活と適度な運動で抵抗力を高めましょう
- 温度調整しやすい脱ぎ着できる服装がおすすめ(汗をかいたらこまめに着替えましょう)
- こまめに換気をしましょう。(ウイルスは空気中に3時間ほど生存すると言われています。)
子どもの風邪に関するよくある質問
- 熱がなかったら、登園・登校してもいいですか?
- 多少咳や鼻水があっても食欲がふだんの80点以上あり、しっかり睡眠ができる状態であれば登園・登校しても構いません。
咳や鼻水のせいで夜間何度も起きてしまう、咳こんで嘔吐し食事ができないなどの状態であれば、発熱がなくても積極的に休養しましょう。無理して登園・登校すると病気が長引いたり、新しい病気をもらいやすくなってしまいます。
- ひと月に何度も風邪を引くのですが…体が弱いのでしょうか?
- 子どもは免疫が未熟で、風邪をひくたびにひとつずつ免疫力をつけ丈夫な体に育っていきます。風邪のウイルスはいくつも種類があるので、何度も風邪をひいてしまうのです。具合が悪くなるのは心配ですが、適度にウイルスや細菌と接触することはむしろ必要なことです。子どもの風邪の典型的な症状経過を知っておきましょう。
- 熱がないのに咳がしつこく続くのはなぜですか?
- 子どもは大人に比べて気道が細く、ちょっとした気道の炎症や痰・鼻水などに反応して咳が出てしまいます。食欲・睡眠・活気に問題がなければ、徐々に治まるまで待ちましょう。咳や鼻水は菌やウイルスなどの異物を体の外に出すための正常な反応で、無理に止めるものではありません。ある程度仕方のないことだと考えてください。
※喘息の子どもが風邪をひくとアレルギー症状が誘発され、喘息発作が出たり咳がしつこく続く場合があります。
- 咳止めが効かない気がするのですが、効果はあるのですか?
- 薬を飲んでもすぐに咳が治まるわけではありません。こまめな水分補給で喉を湿らせたり、のど飴・はちみつをなめる事でも症状の緩和が期待できますよ。 ※はちみつは1歳未満のお子様はボツリヌス菌感染の危険があり禁忌です。
- 風邪の時は、お風呂に入ってもいいですか?
- 高熱や食欲がなくぐったりしている時以外は入浴しても大丈夫です。ただし、長風呂はせず湯冷めをしないように気を付けましょう。入浴後には水分補給をしっかりと行いましょう。
- 鼻水・鼻づまりがひどいのですが、どうしたらいいですか?
- 鼻をかめるお子様には、声を掛けてしっかり鼻をかませましょう。できない場合は、鼻吸い器などを使用してこまめに鼻を吸い出しましょう。中耳炎(風邪の合併症)の予防につながります。鼻をタオルで温めると鼻づまりが改善することもあります。