胃腸炎
子どもが突然嘔吐する、お腹を痛がる、下痢をするなどの症状がみられることを胃腸炎といいます。大半は感染性胃腸炎で、ウイルスが原因のものが全体の70%といわれています。「お腹の風邪」とも呼ばれます。

感染性胃腸炎(嘔吐・下痢)

感染性胃腸炎はウイルスや細菌に感染することで、下痢・嘔吐・腹痛・食欲不振・発熱などを引き起こす病気です。(原因:ロタウイルス・アデノウイルス・ノロウィルス・エンテロウイルスなど)
感染性胃腸炎(嘔吐・下痢)

感染経路

  • 感染者の嘔吐物や、便を触った手や、その手を触れた物を介して口に入り感染します。また、嘔吐物が乾燥し、そこからウイルスが飛散して、そのウイルスを吸い込み感染する場合もあります。
  • 汚染された水や食品からの感染が原因の時もあります(細菌感染)

このような症状があれば受診しましょう

  • 下痢が1日10回以上または1週間以上続いている
  • 発熱や強い腹痛がある
  • 食欲がない、水分が摂れない
  • 便に血が混じっている(黒っぽい便、血便が出ているときは緊急性が高い)
  • 24時間経っても嘔吐が止まらない
  • 反応が乏しく、ウトウト寝てばかり
  • 機嫌が悪く、泣き止まない
  • 口や皮膚が乾き、目が落ちくぼんでいる
  • 尿量が少ない泣いても涙がでていない
  • 呼吸が速い荒い
※ウイルス感染によって下痢が続くと、しばしば白っぽい便がみられます。症状が軽く、食欲がある時は、急いで受診する必要はありません。

ウイルス性の感染に効くお薬はありません

症状を緩和させる薬(整腸剤)や、吐き気止めが処方されます。適切な水分補給を行い、脱水にならないようにしながら回復を待ちましょう。

脱水予防について

子どもは大人より体重あたりの水分量が多く、代謝も活発なため、嘔吐や下痢が続くと脱水を起こしやすくなるので、経口補水液を少量ずつこまめに補給することが大切です。

経口補水液の飲ませ方のコツ

嘔吐があった時は30分程時間をおいて、最初は5~10ml程度を5分おきに飲ませながら様子を見ましょう。
嘔吐が治まってきたら、飲ませる間隔を徐々に短く、1回量を少しずつ増やしてみましょう。
(ゼリー状の経口補水液をスプーンで少しずつ与えてみるのも効果的です)
経口補水液を嫌がる場合は、お薬や水だけではなく、お味噌汁やうどんの汁などを少しずつ飲ませてみましょう。

脱水予防には適度な塩分と糖分が必要です

経口補水液を500ml程度嘔吐せずに飲むことができ、半日以上嘔吐がおさまっていたら、お子さまが欲しがるようであれば消化の良いものを、様子を見ながら開始してみましょう。
炭水化物を中心に少しずつ食べましょう。
授乳中のお子さまは、母乳(ミルク)を少しずつ飲ませましょう。
母乳の場合は授乳時間に1~2分程度、ミルクの場合は薄めずに作り5〜10ml程度から始めましょう。
3時間以上嘔吐がなかったら、少しずつ1回量を増やしていきましょう。

胃腸炎の時の食事は?

水分補給は大切ですが、嘔吐や下痢により身体からは水分だけでなく、電解質も失われていきます。失われた電解質を補い、身体に水分を吸収させやすくするために必要なのは“塩分”と“糖分”が適切な割合で混ざった“経口補水液”なのです。どうしても経口補水液を嫌がる場合は、スポーツドリンクなどで代用しても構いませんが、塩分と糖分が含まれた水分を摂りましょう。
また、母乳や水分がしっかり摂れていたら焦る必要はありません。症状が治まってきたら消化の良い食べ物を選んで少しずつ食べ始めましょう。
消化の良いもの 消化の悪いもの
穀類 お粥・よく煮たうどん 寿司・そば・ラーメン
芋・豆 ジャガイモ・長いも・豆腐・きな粉 サツマイモ・こんにゃく・納豆・おから・油揚げ
卵類 半熟卵・卵豆腐 固ゆで卵・生卵・すじこ
魚介類 たい・かれい・あじ いわしまぐろ・さば・イカ・タコ・貝類
肉類 鶏ささみ・脂の少ないヒレ肉 脂の多い豚肉・ハム・ベーコン・ソーセージ
野菜類 人参・大根・ホウレン草・キャベツ たけのこ・ごぼう・れんこん・にら・セロリ
果物 バナナ・リンゴ・果物の缶詰 みかん・梨・イチゴ・キウイ・スイカ・レーズン
飲み物 経口補水液・麦茶・イオン飲料 炭酸飲料
菓子類 ゼリー・ボーロ ケーキ・ドーナツ
  • 油っぽいもの、辛いもの、糖分の多いもの、酸っぱいものは避けましょう。
  • 牛乳やヨーグルトなどはたくさん飲むと下痢になりやすいので控えましょう。
  • リンゴのすりおろしはお腹にやさしく、適度に栄養と水分が含まれているのでオススメの食べ方です。

感染予防対策

  • 石けんを使って丁寧な手洗いを心がけましょう。特に便を扱ったあと、調理前は要注意!!
  • ノロウイルスの場合エアロゾル化した空気中に漂うウイルスで空気感染をする場合があるので換気が必要です。
  • 効果的なのはアルコールではなく次亜塩素酸ナトリウムを使って消毒しましょう。

嘔吐物の処理方法

マスク・手袋を付け、ポリ袋の口を開けておきます。
※窓を開けるなど換気して、嘔吐処理する人以外は近づかないようにしましょう。
ペットシーツや新聞紙などを嘔吐物の上に被せます。
※嘔吐物が乾燥して空気中に漂わないようにフタをしておきましょう。
次亜塩素酸ナトリウム液を嘔吐物にかけます。
嘔吐物に被せていたものごと拭き取り、ポリ袋に入れます。
次亜塩素酸ナトリウム液を浸したキッチンペーパーで床を拭きます。
嘔吐物が飛び散っているので半径2mの範囲もきれいにしましょう。
汚れた部分を触らないように気を付けながら、マスク・手袋を外し全てポリ袋に入れます。
シューズカバー → 手袋(外側)→ エプロン → マスクの順番に汚れた部分を触らないように気をつけながら外し、全てポリ袋に入れます。ポリ袋は二重にし、最後に外した内側の手袋と一緒に一般ゴミに出しても構いません。ポリ袋の口はしっかりくくってから捨てましょう。
嘔吐の処理が終わったら、しっかり手洗いうがいを行います。
※衣類に付いた嘔吐物は、十分に落としてから0.1%に薄めたハイターに1時間浸すか、85℃以上の熱湯に1分間浸してから洗濯機に入れましょう。

準備しておくと便利なもの

使い捨てのエプロンやシューズカバーがあれば、なお良いです。ビニール袋やゴミ袋をかぶったり、足に付けることで代用できます。
  • 使い捨て手袋:1組
  • 使い捨てマスク:1枚
  • 処理したものが入れられる大きさのポリ袋:1枚
  • ペットシーツ:1枚程度(新聞紙でも可)
  • キッチンペーパー:20枚程度(新聞紙や使い捨ての布でも可)
  • 0.1%次亜塩素酸ナトリウム消毒液:1L〜2Lペットボトルまたはスプレーボトルで必要本数

次亜塩素ナトリウム消毒液の作り方

次亜塩素酸ナトリウム(Na)消毒液は消毒する場面に応じて濃度を変える必要があります。
【濃度の目安】
  • 糞便や吐物が付着した床、衣類等の浸け置き
    0.1% (1000ppm)次亜塩素酸Na
  • おもちゃや物品の消毒、濃度の食器等の浸け置き、ドアノブ、便座、手すり等
    0.02% (200ppm)次亜塩素酸Na
【ハイターを使う場合】
濃度 原液
0.1%(1000ppm) 30L 50ml
0.02%(200ppm) 30L 10ml

胃腸炎に関するよくある質問

登園・登校の目安はありますか?
嘔吐や下痢が落ち着いても、食欲が戻っていない時に無理をすると病気が長引いたり、新しい病気をもらいやすくなります。胃腸炎の回復期には食欲にムラがでることはよくありますので、一日分合わせた食欲が普段の80点以上になるまではゆっくり休めるようにしましょう。また、下痢をしていても食欲があれば体力には問題ありません。元気に遊ぶことができ、下痢の回数が減ってきていれば大丈夫でしょう。(園によっては下痢の回数が多いと登園を控えるように目安を決めていることもあります)
水分を欲しがりますが、飲むとすぐに吐く場合は、飲ませないほうがいいですか?
胃炎を起こしてお腹の動きが悪い状態の時に一気に水分を摂ると、すぐに吐いてしまうことがあります。吐き気が続くときは、吐き気止めの薬を使用してから30分程度時間をおいて、様子を見ながら少しずつ水分を与えるようにして脱水を予防しましょう。
下痢が続くのですが、下痢止めの薬はありますか?
下痢止めは子どもの腸閉塞の原因となるため使用しません。年齢が低い子どもほど下痢が長引く可能性がありますが、必ず治っていくので気長に様子をみましょう。乳児の場合は2~3週間続くこともあります。下痢でおしりが汚れることでかぶれることがあります。オムツをこまめに替えたり、汚れたところをやさしく拭くようにしましょう。かぶれがひどい時は医師に相談してください。